新規事業の立ち上げと事業化を支援する株式会社イノベーション総合研究所(以下、イノベーション総研)は、2026年10月に協業プログラムを開始した。対象は大学・研究機関・知財支援会社で、各機関が担う技術・知財の専門支援に、提携先企業の事業化を進める実務を組み合わせる。研究成果や特許を使いたい大手企業などを紹介してもらい、同社のプロチームがその企業の事業化プロジェクトに参加する。技術を提供する側の専門性と、顧客開拓・事業計画・実証の実務を合わせ、製品・サービスとして提供するための活動を共同で進める。
協業の目的は二つある。一つは、企業への技術紹介や共同研究に、事業化までの支援を加えられるようにすること。もう一つは、顧客の用途や導入条件を確かめ、既存の技術・知財支援をより具体的な活用提案につなげることだ。

研究者に営業を担わせず、事業化の体制を提案
技術への関心や共同研究の相談は、事業づくりの大切な入口となる。その後、技術を使いたい企業が顧客を探し、製品・サービスの提供方法を考え、実証を進める際には、技術の確認に加えて事業開発の仕事が必要になる。同プログラムにおける大学・研究機関や知財支援会社のパートナー企業の役割は、それぞれの機関・企業の専門範囲に応じた、技術の特徴や活用条件の説明、研究者との調整、知財に関する専門支援である。
一方のイノベーション総研は、技術を使いたい企業の担当者とともに、顧客候補へのヒアリング、用途の検証、事業計画、実証を進める。この分担により、研究者や知財専門家に営業まで担ってもらうことなく、提携先企業へ事業化を支える体制を共同で提案できるという。
技術の性能や権利を整理する支援には、誰がどんな作業で使い、何を改善できれば導入を検討するかを確かめる活動を加える。顧客候補へのヒアリングや実証で得た情報は、共有について合意した範囲で技術側にも戻し、必要な性能、利用環境、既存の方法との違いなどを整理したうえで、研究・開発で確かめる項目と顧客への提案内容を共同で検討する。技術の特徴だけでなく、使う顧客、用途、必要な性能、事業化に向けた次の活動まで示せる提案にすることを目指す。提携先企業も技術評価と顧客への確認を並行して進められ、どの用途を試し、何が分かれば追加開発や販売へ進むかを、技術側と事業側で共有する。
事業の主体はあくまで提携先企業
同プログラムでイノベーション総研が事業化の実務を支援する相手は、研究成果や特許を活用したい提携先企業である。その企業が事業の主体となり、同社は企業のチームに加わる形をとる。紹介を受けた後は、企業が目指す事業、検討済みの内容、これから必要な活動を確認し、事業会社での事業開発、顧客調査、技術開発、営業など、案件に必要な実務経験を持つプロを組み合わせて、企業の担当者と役割を分担する。企業側とだけ話を進めるのではなく、大学・研究機関などとも技術面・事業面で確かめることを共有し、担当者と期限、実証後に判断することを具体化して、関係者が進捗を確認できる形でプロジェクトを進める。
想定例:大学の検知技術を工場向け新製品に
同社は協業の想定例として、大学が持つ検知技術にメーカーが関心を持ち、工場向けの新製品を検討している場面を挙げている。この場合、大学は技術の測定条件や対応できる範囲を説明する。イノベーション総研はメーカーの担当者と顧客候補の工場を訪問し、現在の作業、必要な精度、設置条件、購入を検討する条件を聞き取る。
得られた情報をもとに、どの工場のどの作業を対象に試すかを共同で検討する。大学は技術面の確認や研究上の課題整理を、メーカーは試作品の準備や事業方針の判断を担い、イノベーション総研は実証の計画・進行と販売提案の準備を支援する。技術の性能確認に利用現場と購入条件の確認が加わることで、メーカーは製品化に必要な情報をそろえられ、大学側も、技術がどの用途で求められ、次に何を確かめる必要があるかを把握する材料を得られるとしている。
双方向の連携と相談の進め方
イノベーション総研が支援する企業から新たな技術の探索や知財活用の相談が寄せられた場合には、大学・研究機関・知財支援会社との連携を検討する。同社が企業の事業目的や顧客の課題を整理し、技術を提供する側と、活用条件や共同研究で確かめる項目を検討する進め方で、技術の活用や契約に関する判断は関係者で協議する。技術を使いたい企業の紹介を受ける方向と、同社の顧客に研究成果や専門性を提案する方向の両面で、協業の機会をつくる。
相談は、現在の専門支援に何を加えたいかという段階から受け付ける。初回は技術の概要と提携先企業の目的、現在の活動を聞き、共同で担当できる仕事を整理する。具体的な案件がない場合でも、どのような企業からの相談に連携できるかを話し合うことが可能だ。顧客窓口、業務・情報共有の範囲、契約・費用は各機関の規程と関係者の合意に沿って協議し、未公開の技術情報や企業情報は取り扱いについて合意した後に共有する。問い合わせの際は「大学・研究機関・知財支援会社との協業について」と記載するよう案内している。なお、同社は2024年1月設立で、代表者は長尾浩平氏、所在地は東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー。事業の課題を整理する「Compass」、個社ごとに設計する新規事業AIエージェント「Plan」、専門家チームが実務を担う「TeamPro」を提供している。