株式会社電通デジタルと株式会社電通は、「購買」を起点に市場を理解し、成長機会の探索から実行、検証、学習までを循環させるマーケティングアプローチ「購買市場OneIDマーケティング」を開発し、提供を開始した。分析・施策実行・効果検証を確定IDで一貫してつなぐ、両社の「OneIDマーケティング」を進化させたものだ。第1弾では、Amazonが提供するクリーンルームソリューション「Amazon Marketing Cloud(AMC)」と、電通デジタル・電通独自の生成AIソリューションなどを活用する。
分析と施策の「分断」をどう埋めるか
データを使った生活者分析や広告最適化は進んでいる。その一方で、従来のペルソナ分析では、分析で捉えた顧客像を広告媒体上の属性などに置き換える過程で乖離が生じることがあった。分析と施策実行が切り離されやすく、既存の購買者や施策実績を起点とした最適化だけでは、潜在顧客や新たな利用文脈といった成長機会を探るのに限界があったという。
この課題に対して両社が展開してきたのが「OneIDマーケティング」だ。分析結果を媒体上の属性などに置き換えるのではなく、分析した顧客群をID単位でそのまま施策に接続する。施策の結果も同じ基盤上で検証することで、生活者理解を実際のマーケティング活動や改善に結びつける考え方である。
今回の「購買市場OneIDマーケティング」は、この考え方を「購買」起点の市場理解と、新たな成長機会の探索・検証へと広げたものだ。2025年8月に開発し、同年11月から実証事業を行ってきた。今回の提供開始は、その成果を踏まえたものとなる。
Amazonを「インサイトを得る基盤」として活用
第1弾では、Amazonを広告配信の場ではなく、購買オーディエンスのインサイトを得るための基盤と位置づける。AMCは、Amazon上の豊富な購買・行動シグナルをIDベースで分析し、集約・匿名化されたインサイトとして活用できるプライバシーセーフなクリーンルーム環境だ。自社商品の購買オーディエンスに限らず、高頻度オーディエンスからカテゴリ購買オーディエンス、未購買オーディエンスまでを、連続したオーディエンス構造として把握できる。
Amazon上で得られる集約されたオーディエンスの行動インサイトをもとに、新たな成長機会やマーケティング仮説を探索する。そのうえで施策を実行し、購買行動を含めて結果を検証し、得られた学びを次の仮説に還元するところまでを一貫して支援する。
アプローチを構成する6つの要素
- 潜在オーディエンスまでの構造化:自社ブランドの高頻度・低頻度オーディエンスから、カテゴリ購買オーディエンス、未購買オーディエンスまでを連続した構造として捉える。購買・興味関心などの多面的なインサイトから各群の特徴を分析し、次の成長機会がどこにあるかを探る。
- 行動シグナルと意識インサイトの組み合わせ:Amazon上の購買・検索などの行動シグナルに、電通独自の大規模パネル調査に基づく意識・価値観データを加え、生活者理解をより多面的に深める。
- 生成AIによる生活者像の解釈と仮説探索:各オーディエンス群の多次元インサイトを生成AIで整理・解釈し、生活者像やインサイト、ニーズを言語化。「誰に(Target)」「どのような文脈で(Context)」「どのような価値を伝えるか(Message)」という、検証すべき仮説の候補を生成する。
- 検証可能な施策への具体化:仮説をもとに、対象オーディエンス、利用文脈、訴求軸やクリエイティブ表現などを具体化し、実際の施策で有効性を検証できる形に設計する。
- OneIDによる仮説と施策の接続:分析・仮説設計と施策実行を確定IDという共通基準でつなぎ、分析上の仮説を媒体属性などへ置き換えることによる翻訳劣化を抑えながら施策を実行する。その後の購買行動や構造の変化まで捉え、「誰に、どの文脈で、どの訴求が有効だったか」を検証する。
- 検証結果の資産化:施策結果を単発の広告効果として扱わず、顧客群・訴求・反応の関係を学習として蓄積する。成立しなかった仮説も含め、次の市場分析・仮説構築に継続的に還元する。
市場理解から学習までのサイクルを循環させる
このアプローチの特長は、購買を市場理解の起点とし、分析で得た示唆を検証可能な仮説に変換したうえで、OneIDによって施策につなげ、購買行動を含む結果から有効性を検証できる点にある。検証で得た学びを次の仮説探索に還元することで、市場理解、仮説探索、実行、検証、学習のサイクルを継続的に回し、企業固有のマーケティング知見の蓄積と成長機会の探索を支援する。
両社は今回のAMC活用を皮切りに、適用領域や連携基盤の拡張も検討していく方針だ。今後も、Amazonで得られる行動シグナルに独自の生活者データや知見を組み合わせ、生成AIが生み出す多様な仮説候補からマーケターが検証すべき仮説を選び、実市場での検証につなげることで、企業の新たな成長機会の発見と持続的な成長を支えていくとしている。
出典:株式会社電通デジタル