
日本発の優れたプロジェクトを表彰する「PM Award 2026」
一般社団法人PMI日本支部(所在地:東京都中央区、会長:浦田有佳里)は、2026年10月31日に「PM Award 2026」の表彰式を開きました。この賞は、PMIの協力のもと日本発の優れたプロジェクトを表彰するものです。表彰式の後には受賞記念パーティーも開かれ、受賞者や関係者が、それぞれが活躍する領域の垣根を越えて活発に意見を交わしました。
今回は、プロジェクトを実施した企業・団体などの規模に応じて「Small & Medium部門」と「Large部門」の2部門が設けられました。両部門の最優秀プロジェクト賞は、約1,200名が参加した投票で決まりました。主催するPMI日本支部は、日本でのプロジェクト型の働き方の啓発と、その実現手法であるプロジェクトマネジメントの普及に取り組んできた団体です。協力するPMI(Project Management Institute)は、全世界に300超の支部を持ち、会員数は70万人超、認定資格者数は180万人超にのぼる国際的なプロジェクトマネジメント啓発団体です。

最優秀プロジェクト賞は医療と地方インフラの2件
Small & Medium部門:生殖医療の現場から少子化に挑む『WanaB』
Small & Medium部門の最優秀プロジェクト賞は、リプロダクティブサポートファーム東京の「不妊治療・生殖医療専門の医療従事者たちが日本の社会課題解決に挑む、少子化対策プロジェクト 『WanaB』!」が受賞し、特別賞(岡山大学SDGsイノベーション賞)もあわせて受けました。代表の川口優太郎さんによると、このプロジェクトでは1,000名以上の不妊治療経験者や当事者とカウンセリングを重ね、悩みや苦しみ、不安、不満といった生の声を集めることを徹底したといいます。川口さんが所属する生殖医療クリニック錦糸町駅前院は今年1月に新規開業したクリニックで、開業から10か月が経った現在、4,000名以上の患者に選ばれているとのことです。川口さんは、今後も慢心することなく患者の生の声を形にし続けていく考えを述べました。
Large部門:玉名市役所による「階層化点検」の社会実装
Large部門の最優秀プロジェクト賞は、熊本県玉名市役所の「現場発のEBPMと国家プロジェクト(SIP)の挟撃戦略 ー 地方インフラの危機を打ち破る「階層化点検」の社会実装 ー」が受賞し、特別賞(PMI Asia Pacific 賞)にも選ばれました。建設部 土木課 課長補佐の木下義昭さんは、2016年4月に異動した2週間後に熊本地震が起き、小さなひびまで管理しなければならない立場で自らの力不足を痛感したことが取り組みの原点だと振り返りました。エビデンスがなく進めにくい場面では、自らエビデンスを作り、論文を書き、学位を取ることで合意を得てきたといいます。
木下さんは、先日7月に熊本地震がもう一度起きた際のことにも触れました。地震発生から暗くなるまで2時間くらいあり、前もってトリアージやグルーピングができていたことから、皆で手分けして橋を見に行き、記録を確認しながら点検できたそうです。また、日本のインフラはメンテナンスからマネジメントへとつい最近舵を切ったとして、PMIが体系化しているプロジェクトマネジメントの考え方を今こそ学ぶべき時代に来ていると強調しました。

優秀プロジェクト賞と特別賞の受賞プロジェクト
優秀プロジェクト賞には、両部門であわせて以下のプロジェクトが選ばれました。
- Small & Medium部門:株式会社 一心助け「白杖AI – 視覚障害者のためのAI危険検知・歩行支援プラットフォーム」
- Small & Medium部門:株式会社 秋田魁新報社「「REAL だから大丈夫~こどもを守るプロジェクト」」(特別賞:パーソル総研 well-being賞)
- Small & Medium部門:Santas株式会社「テクノフローワン本社オフィス改修プロジェクト」
- Large部門:株式会社エニグモ、株式会社サイキンソー「FloraX:上場EC×検査ベンチャー共創のパーソナライズ腸活事業」
- Large部門:株式会社資生堂「資生堂グローバルイノベーションセンター 製品開発DXプロジェクト」(特別賞:JISA デジタルトランスフォーメーション賞)
- Large部門:株式会社JPX総研、富士通株式会社「ETF市場の未来を支える業界共創プラットフォーム「CredNex」の構築」
このうち「CredNex」について、JPX総研の谷岡和臣さんは、金融業界に多く残るマニュアルのオペレーションの非効率は1社ごとの改善では解決せず、業界全体が変わる必要があるという社会的ジレンマに挑んだプロジェクトだと説明しました。富士通の桑原章紘さんは、AIを使って生産性を高め、業界関係者それぞれの課題にきめ細かく応えてきたことで、最終的にほぼすべての業界関係者にプラットフォームへ参画してもらえたと語りました。資生堂の中村勇輝さんは、5年前にAIと人が共創しながら生活者に新しい価値を届ける未来を信じて突き進み続けたことが評価につながったと述べています。

「計画を完成させる」から「価値を創り出す」へ
PMIのアジア太平洋地域マネージングディレクターであるSoHyun Kang氏は、技術の進化や市場環境の変化、ステークホルダーのニーズの複雑化が進むなか、プロジェクトの成功には納期を守り範囲内で成果を出すだけではもはや十分ではなく、強いリーダーシップ、協働、適応力、そして価値の創出への継続的な取り組みが求められるとのメッセージを寄せました。
選考委員会の委員長を務めたPMI日本支部の浦田有佳里会長は総評で、プロジェクトの成功とは計画したものを完成させるだけでなく、価値を創り出し、その先に何が起こるのかを考え抜くことだと受賞者の取り組みから感じたと述べました。また、プロジェクトではAIなどの新しい技術を使うものの、人と人との協働が必要かつ重要であり、だからこそプロジェクトマネジメントがこれからさらに重要になると指摘しました。そのうえで、価値を創出するプロジェクトを社会に広げていくことに引き続き尽力し、今回の表彰が多くの人の新たな挑戦につながることを願っていると締めくくりました。