株式会社三菱総合研究所(代表取締役 社長執行役員:籔田健二、以下 MRI)は、AIロボティクスの社会実装を加速するため、ロボットの開発・供給だけでなく、現場で継続的に「使いこなす」ための仕組みに着目し、ロボット・サービスプロバイダー(RSP)の構築・発展に向けた3つの提言を取りまとめました。
1. 背景
生成AIやAIエージェントの進展と、ロボット、センサーなどの技術の進化により、AIが現実世界を認識・判断し、機械を通じて行動する「フィジカルAI」の社会実装が進み始めています。特に日本では、人口減少を背景とする構造的な人手不足が深刻化しており、MRIの分析では、「生産」「サービス」の分野でAIエージェントやAIロボティクスを実装しても、2040年に約144万人の人手が不足すると推計しています。
政府も「AIロボティクス戦略」を策定し、2040年までに1,000万台規模のAIロボットの導入を目指しています。また、日本成長戦略では、AIロボットに対し、2040年度までに10.5兆円規模の官民投資を行う方向性が示されるなど、技術開発と社会実装を両輪で進める動きが本格化しています。
一方で、AIロボットの普及には、その開発・供給だけでなく、需要側の現場課題と供給側の技術・製品を結び付け、AIロボットの選定・導入から運用・保守、データ活用、継続的な改善までを支える仕組みが必要です。
MRIは、この役割を担う存在として「ロボット・サービスプロバイダー(RSP)」を提案してきました。RSPは、需要側と供給側をつなぎ、AIロボットをサービスとして継続的に活用するための基盤です。ロボット導入時の設計から運用・保守、データ活用までを一体的に支え、AIロボットを継続的に「使いこなす」ための仕組みを形成します。
図表1 ロボット・サービスプロバイダーの概念

MRIの推計では、RSPを活用してAIロボットの社会実装を拡大することで、2040年には「生産」「サービス」の分野で見込まれる労働力不足の約30%を解消できる可能性があります。
2. 提言の概要
AIロボティクスの社会実装を加速するためには、優れたAIロボットの供給だけでなく、需要側の現場課題と供給側の技術・製品をつなぐ仕組みが重要です。本提言では、RSPに着目し、その構築・発展に向けて、産業界と政府に以下の3点を提言します。
提言1 RSPを「作る」:需要側と供給側をつなぐRSPを新たな産業として育成
RSPは、AIロボットの選定・導入から運用・保守までを一体的に担い、需要側が継続的なサービスとしてAIロボットを利用できる環境を提供します。特に、複数企業の需要を束ねてサービスを提供することは、AIロボット市場の裾野を広げる上で重要です。
製造業・SIerに加え、リース、人材、流通、清掃など、多様なプレイヤーの参入を促進し、「AIロボットを使いこなす」新たなサービス市場の形成を目指します。
提言2 RSPを「支える」:RSPの競争力を決める4つの共通要素の強化
RSPを持続的な事業として成立させるためには、①データ、②基盤モデル、③人材、④安全・セキュリティの4つの共通要素を強化する必要があります。
すでに進められているデータ収集、基盤モデル、安全性評価などの取り組みを活用・発展させながら、RSPを支える基盤整備を進め、継続的な社会実装につなげていくことが求められます。
提言3 RSPを「広げる」:重点分野でのRSPの実践と、成功モデルの業界全体への横展開
建設、インフラ点検、介護・生活の3分野を重点分野とし、それぞれのRSPの具体像を示しました。
まず、産業界が主体となって成功モデルを形成し、その成果を業界全体へ展開することでRSPのスケール化を進めます。
政府には、初期導入、標準化、データ連携、共通基盤などを通じた環境整備が期待されます。
図表2 RSPの構築・発展に向けた3つの提言

3. 今後に向けて
RSPの構築・発展には、具体化すべき課題があります。事業モデルの確立、データの協調領域と競争領域の整理、業界特化基盤モデルの形成、人材の育成・共有、安全・セキュリティの共通要件や標準化などを進める必要があります。また、限られた専門人材で多数のロボット・顧客を支援できる仕組みへ発展させることも重要です。
MRIは今後、産業界や政府・関係機関との連携を通じ、RSPの事業モデルや共通基盤の具体化を進めるとともに、建設、インフラ点検、介護・生活などの現場を起点として、RSPの社会実装・スケール化に向けた検討を深めます。
AIロボティクスの競争力は、AIロボットそのものの性能だけで決まるものではありません。重要なのは「作る」「使う」「学習する」「広げる」循環を形成し、現場で得られたデータや知見をAIロボットやサービスの高度化につなげ、その成果をさらに多くの現場へ展開していくことです。MRIは、RSPをその循環を支える主体へと発展させ、人とAIロボットがそれぞれの強みを活かして協調する社会の実現を目指します。
レポート全文
本記事は、株式会社三菱総合研究所が2026年10月19日にPR TIMESで発表したプレスリリースを原文のまま掲載しています。
元のリリース:【提言】AIロボティクスを「使いこなす」社会へ