採択の概要と意義
本事業は、エネルギー基本計画および核融合開発の国家戦略「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づき、世界に先駆けた2030年代のフュージョンエネルギー発電実証を目指し、多様な方式による挑戦を促進・支援することを目的としています。2029年2月末までに、全採択事業者の総額として600億円規模の補助が想定されています(正式採択および交付金額は後日公表予定)。
Helical Fusionは、フュージョンエネルギーの社会実装に不可欠な「正味発電」「定常運転」「保守性」の実現を追求し、日本で約70年の研究開発実績を持つ「ヘリカル方式」を採用しています。
株式会社Helical Fusion 代表取締役CEOの田口昂哉氏は、今回の補助金事業について「発電プラントを実現するにはどの技術が現実的かを見極めるためのもの」と述べ、「発電効率の高さ、定常性、保守性といった発電プラント向きの特性を持ったヘリカル方式は、フュージョンエネルギーを取り巻く国際競争において、必ずや日本の強みになると確信している」とコメントしています。

「フュージョンエネルギー発電実証推進事業補助金」の詳細
この補助金は、フュージョンエネルギーによる発電実証の達成に向けた技術開発を対象としています。具体的には、以下の要件を満たす事業が対象です。
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フュージョンエネルギー発電に関する技術開発であること
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2030年代の発電実証を目指す計画であること
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商用化前発電実証および社会実装に向けた計画が明示されていること
発電実証には、市場性・経済性が見込まれる発電システムの技術的成立性を示すことや、商用発電プラントに必要な技術の基本的知見を体系的に獲得できることが求められます。また、安全確保、合理的な安全対策、立地地域との対話も前提となります。補助率は2/3以内で、事業実施期間は交付決定日から最長で令和11年2月28日(水)までです。

フュージョンエネルギーは、太陽の輝きと同じ原理を地上で再現することで得られるエネルギーであり、以下の特徴から次世代エネルギーとして期待されています。
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カーボンニュートラル(発電の過程で二酸化炭素を発生しない)
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豊富な燃料(海水中に豊富に存在し、少量の燃料から膨大なエネルギーを生成可能)
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安全性(燃料供給や電源停止により反応が停止)
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環境保全性(発生する放射性廃棄物は低レベルのみであり、従来技術による処分が可能)
日本政府は、エネルギー自給率がOECD諸国と比較して低い15.2%(総合エネルギー統計2023年度速報値)である現状を踏まえ、フュージョンエネルギー開発を強力に推進しています。2025年10月に発足した新政権は、「次世代革新炉や核融合エネルギーの早期社会実装」を成長戦略の核心と位置づけ、内閣府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」(令和7年6月4日改定)では、2030年代の発電実証を目指すロードマップが提示されています。さらに、「重点投資対象17分野」にフュージョンエネルギーが挙げられ、2040年までに3.1兆円の官民投資が目指され、直近3年間で600億円の経済産業省主導補助金制度が公募されるなど、政府としての推進体制が具体化しています。

詳細については、低炭素投資促進機構のウェブサイトを参照できます。
Helical Fusionの取り組みと「ヘリックス計画」
Helical Fusionは2021年に、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)における研究成果を活用する形でスピンアウトした企業です。NIFSは、世界有数の大型プラズマ実験装置「大型ヘリカル装置(LHD)」において、3,268秒間(約54分間)にわたるプラズマの維持や、1億度を超えるプラズマ温度の達成など、ヘリカル型核融合研究を牽引する実績を持っています。

同社が進める「ヘリックス計画(Helix Program)」は、ヘリカル方式の核融合発電所による「実用発電」達成に向けた具体的な計画です。2020年代中をめどに、二大開発要素である「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了させ、2030年代中には最終実証装置「Helix HARUKA」による統合実証、および発電初号機「Helix KANATA」による世界初の実用発電を達成する計画を掲げています。2023年5月には、発電初号機の設計についてまとめた査読付き論文が発表されています。

現在、核融合科学研究所の敷地内にあるHelical Fusion専用スペースでは、最終実証装置「Helix HARUKA」による高温超伝導マグネット実証に向けた製造・建設が進められています。この開発には、国内30社を超える企業や各種共同研究先の協力が得られています。

核融合炉を発電所として商用利用するためには、核融合反応を起こすだけでなく、以下の「商用核融合炉の三要件」をすべて満たす必要があります。
- 正味発電(プラントの外に電力を供給できる)
- 定常運転(24時間365日運転可能な安定性)
- 保守性(運転後の機器交換が可能)
ヘリックス計画では、これらの三要件の実現から逆算した設計に基づいて開発が進められています。


市場の背景と今後の展望
国際エネルギー機関(IEA)の年次報告書「2023年版世界エネルギー見通し」によると、世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測されており、生成AIの普及も背景とした世界的な電力需要の急増に対し、既存発電方法のみで対応することは困難な見通しです。フュージョンエネルギーは、CO2排出がなく効率性の高い発電方法であり、海水等から豊富に採取可能な燃料を用いることから、世界的なエネルギー課題を抜本的に解決する技術として期待されています。
FusionX/Helixosの報告では、核融合プラント建設および電力市場は2050年までに世界で数百兆円規模にまで成長するとの試算が示されており、日本が自動車産業のように世界をリードする巨大産業を創出できる可能性がある一方で、国際的な開発競争も激化しています。
今回の経済産業省による補助金採択は、Helical Fusionの技術開発を加速させ、日本のフュージョンエネルギー開発における競争力を高める重要な契機となります。2030年代の発電実証に向けた着実なマイルストーン達成を通じて、日本のエネルギー安全保障の強化と、新たなクリーンエネルギー産業の創出に貢献することが期待されます。




