「現場が主役になる生成AI × 市民開発」をテーマに掲げたイベント『せとうちMED Innovationカンファレンス』が、2026年10月24日(土)に岡山県倉敷市で開かれました。当日は、医療従事者自身が現場の課題を見つけ、生成AIを使って解決策となるシステムを自ら構築する「現場主導の医療DX」の実践事例が、次々と共有されました。主催は、公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院と、熊本県八代市に本社を置く株式会社SUNABACOです。会場は倉敷中央病院付属予防医療プラザで、倉敷市が後援しました。
来場者はのべ200人、オンライン配信の参加者は2,000人で、合わせて2,200人が参加しました。全国の医療機関の経営層や医師、看護師に加え、自治体や企業の関係者も集まりました。当日の全編を収めたライブ配信のアーカイブは、現在SUNABACOのYouTubeチャンネルで一般公開されています。

病院トップが語ったDXの目的と投資の考え方
寺井院長が語るDXの目的は「医師・看護師などの直接業務の時間を確保し、それ以外の負担を楽にすること」
倉敷中央病院の院長である寺井 章人氏は、自身もITパスポートを取得するなど、病院経営でのIT活用を率いてきた人物です。閉会の挨拶では、当日の内容について「腑に落ちる点が多く、ぜひ当院の中にも取り入れていきたい」と述べました。そのうえで、DXの一番大きな目的は「医師・看護師などの直接業務の時間を確保し、それ以外の負担を楽にすること」だと説明しています。さらに、働き手が減っていく時代にはそこを最優先にできるのがDXの推進だという考えを示しました。
福岡副院長「5つ挑戦して3つ当たれば御の字」
副院長で臨床医学研究所の所長も務める福岡 敏雄氏は、基調講演後の質疑応答の場で、公益性と経営をどう両立させるかという観点からDX投資の考え方を語りました。病院は公的保険制度の制約や公益性に縛られており、同院はそれを絶対に無視しないといいます。そのうえで将来の変化を見据え、常に一歩先への投資を続けていると説明しました。「5つ挑戦して3つ当たれば御の字」という姿勢があるからこそ、地方都市でこの規模の病院を維持し続けられているとの見方です。生成AIの進化については、「AIに『直して』と指示するだけでシステムが修正される世界」になったことに衝撃と感動を覚えたと述べています。

「ベンダー丸投げ」からの転換を訴える主催者
SUNABACO代表取締役の中村 まこと氏は、人手が足りなくなる社会の中で医療の安全と品質を保ち、病院経営を持続させることこそが医療DXの本来の目的だと位置づけています。これまで医療DXを阻んできたのは「要件定義の言語化の難しさ」と「ベンダーへの丸投げ」だったと振り返りました。生成AIが登場したことで、医療者自身が日常の言葉を使い、自分たちの業務に合う仕組みを作れるようになったと指摘しています。そのうえで、機械に任せられることは機械に任せ、人は「人にしかできない医療」に専念する未来を、医療者自らの手で切り拓けると語りました。

現場発の実践事例とフィジカルAIへの展開
ピッチ・事例発表と講演プログラム
当日は、第一線で活躍する医療従事者がピッチや実践事例を発表しました。発表の一部は次のとおりです。
- 音声入力によるカルテ作成支援ツール「コエレク」(平山 傑 氏)
- 食事管理アプリ「何食べた」(さっぽろ大通内分泌クリニック 内藤 久美子 氏)
- 手術物品搬送システム「サプリンク」(谷村皮フ科 杉坂 夢乃 氏/倉敷中央病院との共同開発)
- フィジカルAIで変えるバックオフィス(倉敷中央病院 藤原 崇志 氏)
- 生成AIを用いた市民開発による院内DX(脳血管研究所 理事長 美原 玄 氏)
基調講演とパネルディスカッションの枠では、日本マイクロソフト株式会社 プリンシパル ソリューション エンジニアの畠山 大有氏が「今だから知りたいセキュリティの基礎」と題して登壇しました。また、医療現場の第一人者たちが「生成AIと市民開発が変える現場からのイノベーション」をテーマに議論しました。
医療用フィジカルAIの共同開発で実証実験を本格化へ
SUNABACOと倉敷中央病院 臨床医学研究所は、カンファレンスに先立つ2026年10月5日に、「医療用フィジカルAIの共同開発に関する基本合意書(MOU)」を締結しています。今後は、手術室での器械出し支援、使用済み器具の洗浄、院内物流など、医療従事者にとって物理的な負担が大きい業務を対象に、省人化・自動化に向けた実証実験を本格化させる方針です。あわせて、今回のカンファレンスで生まれた「現場主導の医療DX(市民開発)」の動きを、全国の医療機関へさらに広げていくとしています。
出典:株式会社SUNABACO