DX・テクノロジー NEW

NTT、低軌道衛星MIMOの軌道上実証で単一アンテナ方式比最大約2.67倍の大容量化を確認 920MHz帯IoT信号の同時受信・分離にも成功

NTT、低軌道衛星MIMOの軌道上実証で単一アンテナ方式比最大約2.67倍の大容量化を確認 920MHz帯IoT信号の同時受信・分離にも成功 DX・テクノロジー

NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と取り組む、世界初の「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」について、実験結果を明らかにしました。革新的衛星技術実証4号機(小型実証衛星4号機)に低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置(LEOMI)を載せて軌道上で実験した結果、低軌道衛星MIMO技術では、単一アンテナを用いた従来の通信方式と比べて最大約2.67倍の大容量化を確認しました。

もう一つの柱である衛星センシング技術では、地上の異なる2地点から同一周波数で同時に送信した920MHz帯LPWA信号を衛星上で受信し、2つの信号を正常に分離・復調できることを確かめています。テーマは、低軌道衛星で「より多く送る・より多くつなぐ」ことです。将来的には、衛星通信サービスの通信品質向上に加え、地上通信網が整備されていない海洋や山間部などでのIoTデバイス活用やセンシングサービスへの応用が期待されています。

NTTは宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の発表やスペースコンパス社の設立など、宇宙事業への取り組みを進めてきました。2019年11月からは、NTTの光・無線ネットワーク技術とJAXAの「宇宙機のシステム構築技術」を掛け合わせ、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」などに向けた共同研究を行っています。今回の実証は、衛星で得た高精細・大容量の観測情報の利活用や、地上のあらゆる場所のセンサーデータ収集を担う「超広域衛星センシングプラットフォーム」の実現に向けたものです。その実現には、低軌道衛星から地上基地局への無線信号の周波数利用効率を高めて伝送容量を改善する「低軌道衛星MIMO技術」と、無線局免許不要で多様な地上用LPWA無線端末を収容できる「衛星センシング技術」が欠かせないとされています。

NTT、低軌道衛星MIMOの軌道上実証で単一アンテナ方式比最大約2.67倍の大容量化を確認 920MHz帯IoT信号の同時受信・分離にも成功

2025年12月に打ち上げ、2026年3月から定常運用

NTTとJAXAは「革新的衛星技術実証プログラム」の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに応募し、選定されました。LEOMIを含む実証テーマ機器を搭載した小型実証衛星4号機は、2025年12月14日12時09分(日本標準時)に打ち上げに成功し、2026年3月から定常運用が始まっています。LEOMIは、小型実証衛星への搭載性を考慮したスケールモデルです。定常運用の期間は2026年3月から約1年間で、5か月間の試験の中で2つの技術それぞれの実証実験が行われました。

低軌道衛星MIMO:2×2で平均約1.94倍、3×3で平均約2.67倍の伝送容量

低軌道衛星MIMO技術は、衛星から地上基地局へのフィーダリンクで、複数のアンテナから異なる信号を同一周波数で送り、地上側で分離することで限られた周波数の利用効率を高めるものです。分離精度を上げるため、地上基地局には遠隔に配置した複数の受信アンテナを使います。ただし低軌道衛星は伝搬路が刻々と変わるため、離れた地上基地局の間で到来時間やドップラーシフトが異なり、多重信号の分離精度が落ちるという課題があります。NTTとJAXAは、時間周波数非同期干渉補償技術、通信路モデル化(通信容量推定)技術、制御キャリアレスMIMO復調技術を用いてこの課題に取り組みました。

2026年3月13日の定常運用開始以降、約5カ月間にわたる伝送実験では、送受信アンテナを1台ずつ使う従来のSISO伝送と比べ、2026年5月5日の2×2 MIMO実証実験で伝送容量が平均約1.94倍、2026年5月24日の3×3 MIMO実証実験で平均約2.67倍となりました。アンテナ数を増やすことによる大容量化効果が確認された形です。さらに、NTT・JAXAが生成した低軌道衛星MIMOの通信路モデルを用い、衛星の軌道シミュレータからチャネル容量のシミュレーション値を算出したところ、実測値と変動トレンドが一致しました。軌道予測が可能な衛星のような通信システムでは、伝送容量の挙動パターンを事前に把握できることが確認されたことになり、システム構築時に想定する衛星の軌道情報をもとに衛星アンテナ数や衛星地上局アンテナ配置を解析的に設計することで、安定的な伝送容量向上につなげられることが期待されています。

衛星センシング:同一時間・同一周波数での2端末通信を確認

衛星センシング技術の実験では、地上の異なる2地点に置いた同一周波数・同一方式のIoT端末から信号を同時に送信し、衛星上で受信した信号の復調を試みました。受信信号には2端末からの信号の重なりが観測されましたが、それぞれに信号処理と復調処理を施した結果、良好に分離できました。これにより、2地点のIoT端末が衛星と同一時間・同一周波数で通信できることが確認されました。この技術が確立すれば、小型・省電力のIoT端末を衛星のみで地球上の場所を問わず大規模に収容でき、地上基地局が不要になることから、インフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータなどで使われるIoTサービスを低コストかつ広域に展開できることが期待されています。

図2.MIMO伝送とSISO伝送の伝送容量比較※伝送容量が高いほど、通信でより多くのデータを送信できることを示します。
図2.MIMO伝送とSISO伝送の伝送容量比較※伝送容量が高いほど、通信でより多くのデータを送信できることを示します。

約1年間の定常運用で技術確立へ、11月のフォーラムで展示予定

今後は、2026年3月から約1年間の定常運用を続け、技術の優位性を定量的に示すことで技術確立をめざします。低軌道衛星MIMO技術では、送受信アンテナ数の異なる条件の実験を様々な衛星パスで複数回行い、統計的な大容量化効果を評価します。衛星センシング技術では、様々な条件でIoT端末の送信実験と電波環境試験を実施し、技術の適用条件を確立する方針です。低軌道衛星MIMO技術とIoT技術を確立することで、観測衛星の高精細な画像・レーダー情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度向上に寄与するとしています。

NTTは引き続き、宇宙ビジネスのブランド「NTT C89」のもとで、衛星を活用した社会インフラ関連の課題解決を進めていくとしています。今回の研究成果は、2026年11月18日~25日に開催される「NTT R&D FORUM2026」で展示される予定です。

出典:NTT株式会社

この記事を書いた人

webmaster

ビジネス・経済を軸に、経営・マーケティング・DX・キャリアの実務に役立つ情報を発信しています。