株式会社ACTANT(東京都杉並区、代表:南部隆一)が主宰するSystemic Design Club Japanは、入門キット『システミックデザイン・ツールキット』を制作し、公式サイトで無料公開しました。複雑な組織・社会課題の構造を捉え、多様な関係者とともに望ましい未来と変革の道筋を探るためのキットです。あわせて、ツールキットを使いながら基本を学ぶ「システミックデザイン入門ワークショップ」シリーズも始まり、第1回は2026年12月1日(火)にオンラインで開催されます。

応急処置だけでなく「構造」にも向き合うアプローチ
組織変革、サステナビリティ、地域課題、気候変動など、多くの課題はさまざまな要素が複雑に影響し合う「システム」として存在しています。こうした課題に対しては、目の前の問題への応急処置だけでなく、その背景にある関係性や構造、人々の認識(メンタルモデル)を捉え、多様な関係者とともに変化を生み出していくアプローチが求められています。
その手法として、欧米の政策立案やソーシャルイノベーションをはじめ、さまざまな領域で実践されているのが「システミックデザイン」です。システム思考とデザイン思考を統合した考え方ですが、日本ではまだ、実践的に学び活用する機会が限られています。そこでSystemic Design Club Japanは、日本の企業や自治体、地域社会などの現場で実務者やデザイナーが実践できるよう支援するために、今回のツールキットを制作しました。
ツールキットのベースは、書籍『システミックデザインの実践』の著者であるピーター・ジョーンズ氏、クリステル・ファン・アール氏らによる手法です。これを日本の企業や自治体などの現場で使いやすいように編集しています。同書は武山政直氏監修、高崎拓哉氏訳でBNNから2023年に刊行されました(原題:Design Journeys through Complex Systems)。システム思考とデザイン思考を融合し、システミックデザインの理論と30以上の実践的なツールを網羅したガイドブックです。

ツールキットの3つの特徴
システム理解から移行戦略まで、行き来しながら探索できる
ツールキットは、システミックデザインの7つの実践ステップに沿って構成されています。7つのステップとは「システムのフレーミングを行う」「システムの声を聴く」「システムを理解する」「望ましい未来を思い描く」「可能な介入策を探索する」「移行戦略を策定する」「長期的に実行する」です。システムや課題の構造理解から、望ましい未来の構想、効果的な介入ポイントの発見、具体的な移行戦略の策定までを一貫して探索できます。プロセスは固定された直線的なものではありません。現場の状況や新たな気づきに応じてステップを行き来し、探索を深められる設計です。
多様な視点を共有し、対話と協働を促す
異なる立場や専門性を持つ関係者が、それぞれの視点や認識を共有し、課題への理解を深めるために使えます。ツールを介した対話や共同作業を通じて、個人では気づきにくい課題の捉え方や新たな可能性を見つけられます。共通認識の形成や、協働による変革の取り組みを支援することも狙いです。
使いながら学べる、必要なツールだけ選んで使える
各ツールには、目的や使い方の簡単な解説とワークシートが付いています。システミックデザインに初めて触れる人でも、実際に使いながら基本的な考え方や手法を学べます。目的や状況に応じて必要なツールだけを選び、個別に活用することも可能です。想定される活用場面は、組織開発や事業開発、地域・社会課題への取り組みなどです。
主な利用者として、次のような人々が想定されています。
- 複雑な事業・組織課題を構造的に捉え、新たな事業や組織変革の可能性を探索したい企業の経営企画・事業開発・組織開発担当者
- 多様な関係者と協働し、地域・社会課題の解決に取り組みたい行政・自治体・公共機関の担当者
- 従来のデザインアプローチを拡張し、複雑な課題への理解を深めたいデザイナー
- システミックデザインを研究・教育や実践に取り入れたい大学・研究機関の研究者

入門ワークショップ第1回のテーマは「因果ループ図」
ツールキットの公開にあわせて、初心者向けの「システミックデザイン入門ワークショップ」シリーズが始まります。ツールキットに収録されたツールを使い、参加者同士で対話や共同作業をしながら、基本的な考え方や活用方法を学ぶ内容です。専門的な知識や経験は必要ありません。システミックデザインに初めて触れる人も安心して参加できる入門プログラムとして位置づけられています。
第1回では、システム思考の代表的な手法である「因果ループ図」を扱います。問題に関わるさまざまな要因がどのように影響し合い、現在の状況を生み出しているのかを、因果ループ図を通して読み解きます。実際に図を描く簡単な演習も交えながら、基本的な考え方や活用方法を体験できます。開催概要は以下のとおりです。
- テーマ:因果ループ図を通して複雑なシステムを読み解く
- 日時:2026年12月1日(火)18:30〜20:30
- 開催形態:オンライン(Zoom)
- 参加費:2,000円
- 定員:最大16名
- 対象:企業経営者、経営企画・サステナビリティ部門担当者、自治体職員、デザイナー等
- 主催:Systemic Design Club Japan
- 申し込み:Peatix
Systemic Design Club Japanは、研究と実践を行き来しながらシステミックデザインの可能性を探る、組織や領域を横断したゆるやかな活動コミュニティです。日本に導入されたばかりのメソッドやツールを自ら実践し、知見を深めて広める活動を行っています。日本で活躍する現場のデザイナー、あるいは企業や市民が取り入れられるよう、汎用性の高いシステミックデザインの普及・発展を目指しています。主宰する株式会社ACTANTは、サービスデザインやシステミックデザインをベースに、定性リサーチからコンセプト立案、社会実装まで、持続可能なサービスやビジネスの実現を支援するデザインファームです。
出典:株式会社ACTANT