帯広市川西農業協同組合(JA帯広かわにし)、日本電気株式会社(NEC)、NECネッツエスアイ株式会社(NECネッツエスアイ)、Morse Micro PTY. LTD.(Morse Micro)の4者は、北海道十勝地域の大規模畑作圃場で、ロボットトラクターを遠隔から監視・制御する実証実験を共同で実施しました。通信には、長距離通信に適した無線LANである850MHz帯Wi-Fi HaLowを使っています。この取り組みは、総務省「地域社会DX推進パッケージ事業 実証事業(先進的通信システム活用タイプ)」の一環として行われました。
850MHz帯Wi-Fi HaLowでロボットトラクターの自動運転を行うのは、国内で初めてです(NEC調べ、2026年10月23日時点)。Wi-Fi HaLowは、IEEE 802.11ahに準拠し、1GHz未満の周波数帯を利用する無線LAN規格です。今回の実証では850MHz帯を使用しました。長距離通信と低消費電力を特長としています。

広大な圃場の遠隔監視を阻んできた「送信時間の制限」
十勝地域をはじめとする大規模畑作地帯では、農家の担い手不足や高齢化が進んでいます。こうした背景から、ロボットトラクターなどを使った農作業の自動化・省力化が求められています。ただし、広い圃場でロボットトラクターを遠隔から監視・制御するには、長い距離でも映像を安定して送れる無線通信が欠かせません。
これまでは920MHz帯Wi-Fi HaLowの活用が期待されていました。しかし920MHz帯には、電波を放射できる時間を1時間あたり360秒以内とする電波法令上の制限(Duty制限)があり、映像を途切れずに伝送するうえで課題がありました。850MHz帯Wi-Fi HaLowではこの送信時間の制限が解消されるため、長距離でも安定した映像伝送が可能になります。
2段階で通信性能と作業性を検証
評価キットで距離とスループットの関係を測定
最初の段階では、Morse Micro製の無線通信評価キット「MM8108-EKH01」を使い、圃場でのスループットと通信距離の関係を測定しました。十勝地域のような大規模畑作の圃場では、一辺が500mを超えることもあります。そこで、ロボットトラクターとコントローラの間の通信距離を最大1,000mまで広げた場合に、どの程度の通信性能が得られるかを確認しました。
ロボットトラクターで長いも栽培の模擬作業
次の段階では、ヤンマーアグリ株式会社のロボットトラクターにMM8108-EKH01を搭載しました。そのうえで、850MHz帯Wi-Fi HaLowを介した遠隔監視・制御と自動運転により、長いも栽培を想定した模擬作業を実施しました。最大1,000mの無線通信による遠隔制御と自動運転を行った結果、これまで課題とされてきた通信距離の不足や映像の遅延は発生しませんでした。連続した映像の伝送も確認でき、作業は円滑に進みました。4者は今回の成果を、大規模圃場における農作業の自動化・省力化に向けた第一歩と位置づけています。
4者の役割分担と今後の展開
実証での各者の役割は次のとおりです。
- JA帯広かわにし:実証事業の代表機関
- NEC:実証の取りまとめ、通信システムの構築・評価など
- NECネッツエスアイ:850MHz帯Wi-Fi HaLowの通信性能測定・評価
- Morse Micro:850MHz帯Wi-Fi HaLowに関する技術支援
今後は、地域社会DX推進パッケージ事業を通じて、850MHz帯Wi-Fi HaLowを活用した複数台のロボットトラクターの同時運用や、AIを活用した作業監視への適用などを検討する予定です。これらの取り組みにより、大規模畑作圃場でのスマート農業の社会実装と、農業の担い手不足の解決に貢献していくとしています。