ゴムマリ株式会社(東京都、代表取締役:村山悠太)は2026年10月24日、「マスタ移行 for SAP S/4HANA®」の提供を開始しました。同社の「専門業務AI-BPO」は、AIが処理した内容を人が確認し、成果物として納めるサービスです。今回のメニューは、SAP S/4HANA®ソフトウェアへの移行を控える企業を対象に、品目・部品マスタを移行前に整備します。依頼企業が移行元から出力したマスタを送ると、依頼企業が修正した表記の統一ルールで全件の品名を正規化します。あわせて、同じ部品と思われる品目を根拠つきの重複候補として挙げ、変更前と変更後の対応表とともに返却します。
移行方式を選んでも、マスタの重複や表記揺れは残る
背景には、SAP ERP 6.0ソフトウェアの標準保守が2027年末に終わる、いわゆる「SAPの2027年問題」があります。SAP SEの2020年2月4日の発表によると、SAP ERP 6.0を含む中核アプリケーションの標準保守(メインストリームメンテナンス)は2027年末まで提供されます。その後は、2030年末までの延長保守を選べます。
株式会社電通総研が2025年12月17日に発表した「SAPユーザー意識調査結果2025年度版」には、SAPのERPを導入している国内企業295社が回答しました。回答企業の55.9%がSAP ECC 6.0を使っており、これらの企業のSAP S/4HANAへの移行方針は「未定」が24.1%でした。想定する方式で最も多かったのは「ストレートコンバージョン方式または選択データ移行方式」(31.5%)です。また、SAP S/4HANAを使う企業でも、ECCからストレートコンバージョン(現行システムをそのまま変換する方式)で移行した企業が47.6%で最多でした。
現行システムをそのまま変換する方式では、品目マスタも現在の中身のまま新システムへ移ります。長年使われてきたマスタには、次のような品目が残っています。
- 同じ部品が別の品目コードで二重に登録されている
- 材質・寸法・メーカー型番が品名に書き込まれている
- 分類の項目が空いている
移行するデータを選ぶ方式や作り直す方式でも、新システムに入れるマスタは、移行前に誰かが整える必要があります。この作業が人の手に残るのは、どの品目同士を一つにまとめてよいかを品名の文字だけでは判断できないためです。同じ品名に別の型番の部品が並ぶこともあれば、書き方の違う品名が同じ部品を指すこともあります。最終的な見極めは、その部品を使ってきた企業の担当者が行います。人手で全件を見直すと、件数が多いほど途中で基準がぶれていきます。整備しないまま移行すれば、同じ部品の在庫や購買の実績は、新システムでも別々の品目に分かれたまま残ります。
5つの段階で、全件を一つのルールにそろえる
サービスでは、品名の正規化と重複候補の洗い出しをAIが担い、ルールと候補の根拠を人が確認します。統合するかどうかと統合先の品目コードは、依頼企業が決めます。進め方は次の5段階です。
- 受け取る:移行元の基幹システムから出力した品目・部品マスタ(CSV・Excel)を受け取り、移行対象の範囲を決めます。既存の分類体系があれば分類に使います。部品表(BOM)や購買・在庫の実績があれば、同じ部品かどうかの判定に使います。
- ルールを決める:全角と半角、旧字体、単位、型番の表記などについて、品名の書き方のルールを実データから下書きします。依頼企業が修正したルールを数百件で試し、確定させます。
- 全件を整える:確定したルールを全件の品名に適用します。品名に書き込まれた材質・寸法・メーカー型番を別の列に取り出し、分類コードを付けます。
- 重複候補を挙げる:同じ部品と思われる品目の組を、根拠と確からしさを添えて一覧にし、人が根拠を確認します。
- 対応表にまとめる:品目ごとの変更前と変更後を対応表にまとめ、照合結果を添えて返却します。照合結果では、全件を機械で照合した項目と、依頼企業の判断に回した項目を区別します。
マスタは、メールや共有フォルダなど、依頼企業が普段使っている方法で送れます。専用システムの導入や操作の習得は必要ありません。整備したマスタと対応表は、移行を担う社内チームやSIerにそのまま渡せる形で納品されます。移行元での修正や移行先への登録は、そのチームやSIerが対応表をもとに行います。正とするのは、依頼企業が修正した表記の統一ルールと、統合可否についての依頼企業の判断です。移行元のマスタの書き方は正としません。統合候補として挙げるのは、型番・寸法・購買や在庫の実績のうち複数がそろう組だけです。出力された項目に意味の分からないものがあれば、統合の根拠に使う前に依頼企業へ確認します。
時間・ミス・属人化の3点で変わる準備作業
これまで担当者は、似た品名を探して統合し、品名から寸法や型番を書き写してきました。判断に迷う品目は詳しい人に一件ずつ確認し、その判断はメールや手元の表に散らばったままでした。サービスの利用後は、全件の品名が依頼企業の表記ルールでそろい、材質・寸法・メーカー型番は別の列に分かれます。担当者が確認するのは、根拠つきの重複候補と照合結果です。たとえば「品目コードは別だが、型番・寸法・購買の実績が一致するため、同じ部品の可能性が高い組」「品名は同じだが、材質の記載が異なるため、判断が必要な組」といった形で示されます。統合の可否を決めると、その結果が対応表に残ります。同社は、変化を次の3点に整理しています。
- 時間:品名を一件ずつ見比べていた時間が、候補の当否を決める時間になります。現行システムを変換して移す場合、整備したマスタと対応表は移行前に直す項目の一覧になります。作り直す場合は、新システムに入れるマスタの元になります。そのため、移行方式が決まる前から整備を始められます。
- ミス:担当者や時期によってぶれていた表記の基準が、移行前に一つのルールにそろい、分類コードもそろいます。どの品目をどの品目に統合したかを対応表で確認できるため、重複や揺れを新システムに持ち込まず、同じ部品の実績を一つの品目にまとめて移す準備ができます。
- 属人化:詳しい人の経験に頼っていた同一部品の見極めが、根拠つきの判断記録として対応表に残ります。表記ルールも文書として残るため、移行後に新しく登録される品目にも同じルールを適用できます。
価格は50万円から、移行後の継続対応も
価格は50万円からで、分量に応じて着手前に提示されます。期間は2週間が目安で、着手前に確定します。同じ部品として統合するかの最終判断は依頼企業が行い、移行先への投入・設定はサービスに含まれません。また、SAP SEおよびその関連会社の認定・提携サービスではありません。移行後に新しく登録される品目の正規化は、月額の「業務AIエージェント導入」で同じルールのまま続けられます。移行の予定とは関係なく、日々使う基幹システムの品目・部品マスタを整えたい場合は、スポットメニューの「マスタクレンジング」で対応します。記載の価格・期間は配信時点のもので、改定される場合があります。
代表取締役の村山悠太氏は、移行期限が近づくと議論はどの方式で移すかに集まりがちだが、移すマスタの中身を決められるのはその部品を使ってきた企業の人々だと述べています。そのうえで、同じ部品かどうかの判断を根拠つきの候補にして企業に委ね、変更の前後を対応表でたどれる形で納めることにしたと説明しています。2025年5月設立の同社は、AIエージェントの業務実装を事業としています。
出典:ゴムマリ