サプライチェーン寸断が約40%増加、復旧には12週間超:A.T. カーニーがAI活用によるリスク管理の新アーキテクチャを提唱

サプライチェーン寸断の現状と「予見型リスク・インテリジェンス」

A.T. カーニー株式会社は、論考『サプライチェーン・リスク管理の新たなアーキテクチャ』(英題:A new architecture for supply chain risk management)を公開し、グローバルサプライチェーンにおけるリスク管理の新たなアプローチを提唱しました。

サプライチェーン寸断の深刻化

近年、グローバルなサプライチェーン寸断は約40%増加しており、その復旧には12週間を超える事態も発生しています。多くの企業が過去のデータや顕在化したシグナルに依存しているため、業界や地域を越えて波及する非線形な寸断への対応が困難になっています。

特に、サプライチェーン・ネットワークの深い階層で発生するショックが多いにもかかわらず、サブティア・サプライヤーについて十分な可視性を確保できている組織は5社に1社未満にとどまります。サプライヤーの再設計には最大2年を要するため、寸断が顕在化してから対応を始める従来の警戒サイクルでは、十分な対応時間を確保することが難しいとされています。

AIを活用した「予見型リスク・インテリジェンス」

A.T. カーニーは、AIと代替データを活用し、リスクの早期兆候を捉えて事業への影響を把握し、組織横断の対応につなげる「予見型リスク・インテリジェンス」を提案しています。一部の先進企業では、規制、物流、気候などに関する5,000を超える早期指標を監視し、寸断の影響が市場、オペレーション、財務に顕在化する前に行動することを目指しています。

早期指標監視の具体例

論考では、以下のような具体例が紹介されています。

  • 自動車業界: リチウム鉱山の許認可動向を監視することで、電池材料不足の潜在的な兆候を18~24カ月前に捉えられる可能性があります。また、ティア2サプライヤーの労働争議を予測するモデルでは、寸断発生の最大60日前に警戒情報を得ることができます。

  • 製薬業界: インドと中国におけるFDAの警告書やAPI工場の査察結果を分析することで、起こり得る供給制約を6~12カ月前に把握できる可能性があります。

4つの設計原則と寸断影響の最大45%削減

次世代のサプライチェーン・リスク管理では、データ、予測分析、意思決定プロセスを一つの視点に統合し、将来を見通すための情報を組織横断の行動へとつなげます。その実現に向けた4つの設計原則が示されています。

4つの設計原則

  1. 分析対象と優先領域を明確にする: 重要サプライヤー、高影響地域、戦略コモディティに焦点を絞り、ノイズを減らして資源を集中します。
  2. シグナルを将来を見通す洞察へ変える: 通商フロー、気候・政策、社会的センチメントなどの情報から、AIが有意な変化を背景ノイズから識別します。
  3. 事業への影響を定量化する: 潜在損失、復旧コスト、バリュー・アット・リスクなどを財務・調達・業務で単一ビューとして共有します。
  4. 検知したリスクを組織横断の対応へ結び付ける: 計画、調達・財務、シナリオテストなどを通じて、構造化されたトリガーで判断と行動へ接続します。

AIモデルは、通商フロー、気候データ、政策発表、社会的センチメントなどを継続的に分析し、意味のある変化と背景ノイズの識別を支援します。早期に捉えたシグナルを潜在的な損失や復旧コストへ換算し、その情報を計画、調達、財務の意思決定に反映することで、生産能力の確保、調達の調整、在庫の再配置などの選択肢を早期に評価することが可能になります。これらの要素が連動して機能することで、サプライチェーン寸断による影響を最大45%削減できる可能性があるとされています。

成功事例

個別事例として、あるグローバル自動車メーカーでは、5,000社のサプライヤーにまたがる40万点を超える部品を追跡し、単一供給源への依存を約1,200件から300件未満へ削減しました。その結果、2020年のパンデミックに伴うサプライチェーン寸断時には、復旧速度が87%向上し、10億ドルを超える潜在的な損失を回避したと報告されています。

論考およびA.T. カーニーについて

本論考の詳細については、以下のURLから確認できます。

監修は、東京オフィスの戦略オペレーションプラクティスのコアメンバーである小崎 友嗣 シニア パートナーと、戦略オペレーションプラクティスおよび消費財小売プラクティスのコアメンバーである濱口 典久 シニア パートナーが担当しています。

A.T. カーニーは、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けています。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。