公開の背景と目的
東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を要請して以来、企業では資本コスト、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)などの開示や目標設定が進められています。しかし、時価を基準に投資判断を行う投資家の期待収益率と、簿価を基準に算定される企業のROE・ROICを単純に比較すると、PBR(株価純資産倍率)の水準に起因する乖離が生じるという問題意識がありました。
本ワーキングペーパーは、この論点を整理し、資本コストを経営に活用する際の新たな考え方を提示することを目的としています。
ワーキングペーパーの主な内容
ワーキングペーパーでは、PBRが1倍を上回る企業を念頭に、株主資本コストやWACC(加重平均資本コスト)を、時価と簿価の差を踏まえて調整する考え方を説明しています。仮想企業の数値例を用いて、簿価ベースのROE・ROICの目標水準を検討する方法も示されています。
さらに、東証プライム市場およびスタンダード市場の上場企業を対象とした分析が行われました。その結果、調整前の株主資本コストの平均値が6.91%であるのに対し、PBR調整後は約10%となることが示されています。
主な論点は以下の通りです。
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資本コストやROE・ROICを比較・ベンチマークする際に、時価ベースの投資家の期待と簿価ベースの企業指標との関係を考慮する必要性
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仮想企業の数値例による、PBR調整の計算方法と中期・長期の目標設定への活用方法
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日本企業のデータ分析を通じた、PBR調整前後の株主資本コスト・WACCの水準および分布の比較
本稿の意義とコメント
本稿は、資本コストや株価を意識した経営を実践する上で、資本コストを算定するだけでなく、どの資本利益率とどのような基準で比較するのかを明確にすることの重要性を強調しています。PBRを手がかりに、企業価値向上に向けたROE・ROICの目標設定や資本効率経営を検討する際の新たな論点を提示するものです。
京都大学経営管理大学院の砂川伸幸教授は、PBRが1.0を上回る企業が更なる高みを目指すためには、ROEのベンチマークを「株主資本コスト(CAPM)×PBR」(PBR調整した資本コスト)にすることが求められるとコメントしています。
株式会社レイヤーズ・コンサルティング経営管理事業部のシニアマネージャーである大橋遊氏は、ROE・ROICと資本コストの分母が簿価と時価で異なる点が、これまで十分に説明されていなかった論点であると指摘。今回の手法で資本コストを補正すると、多くの企業で想定より高い収益性が求められる可能性があり、それに応えるためにはキャピタルアロケーションと成長投資の実現に取り組む必要があると述べています。
ワーキングペーパー概要
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タイトル:「資本コストのPBR調整―資本コストや株価を意識した経営の深化―」
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著者:大橋 遊(株式会社レイヤーズ・コンサルティング)/砂川伸幸(京都大学経営管理大学院 教授)
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公開日:2026年8月21日(金)
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公開先:京都大学経営管理大学院 共同研究・産学連携 ワーキングペーパー掲載ページ
株式会社レイヤーズ・コンサルティングについて

株式会社レイヤーズ・コンサルティングは1983年に創業した日本発の独立系コンサルティング会社です。人事・人財戦略策定、タレントマネジメントシステム構築、人事制度設計、経営管理制度の構築・導入、会計システム再構築、原価企画、原価管理、製品開発プロセス改革、事業戦略再構築、新規事業開発、デジタルトランスフォーメーション推進など、幅広い領域でコンサルティングサービスを提供しています。




