日本のICT市場、2035年には8,000億米ドル規模へ拡大予測:デジタル化と5Gが成長を牽引

市場成長の主な要因

この市場成長は、日本経済のデジタル化、5Gおよびブロードバンドの普及、クラウドサービスやソフトウェアの需要増加、企業のITインフラ更新、デジタル決済の拡大など、複数の要因によって推進されます。特に、業種別では銀行・金融サービス・保険(BFSI)がCAGR9.3%、企業規模別では中小企業がCAGR10.3%で成長すると予測されており、市場平均を上回る伸びが期待されています。

広範な領域を含むICT市場の構成

日本のICT市場は、ハードウェア、ソフトウェア、IT・インフラサービス、通信サービスといった広範な領域を含みます。ハードウェアにはネットワークスイッチ、ルーター、WLAN、サーバー、ストレージなどが含まれ、これらがクラウド、業務ソフトウェア、通信、デジタルサービスの基盤を形成しています。ICT市場の成長は、特定の製品だけでなく、日本企業や行政、消費者のデジタル利用全体の拡大を反映しています。

通信インフラの進化

通信インフラはICT市場の基盤です。2020~2021年には日本の通信分野の売上高が15兆2,405億円に達し、前年比2.5%増加しました。また、固定ブロードバンド契約数は前年比2.7%増の4,883万件に達し、高速ネットワークへの需要が継続していることを示しています。

5Gの普及も重要な成長要因です。5Gスマートフォン向け超高速モバイルブロードバンドの契約数は4,502万件に達し、ブロードバンド・無線アクセスの利用も5.3%増加しました。これらの高速モバイルネットワークの普及は、動画配信、クラウド利用、モバイル決済、リモートワーク、IoTなど、多様なICTサービスの利用を支えています。

日本では固定通信よりもモバイル通信の存在感が大きく、2021~2022年にはモバイル通信契約者数が固定通信契約者数の12倍以上に達しました。この傾向は、日本のデジタル利用がスマートフォンや無線ネットワークを中心に発展していることを示しており、通信事業者にとっては5Gを利用した高付加価値サービスの拡大が重要となります。

半導体産業の動向

半導体もICT市場において重要な位置を占めています。2021年には日本の半導体生産額が前年比29.6%増加し、7,412億円に達しました。半導体は、サーバー、通信機器、スマートフォン、自動車、産業機器、IoTデバイスなど、ほぼすべてのICT関連製品に不可欠であり、その生産能力や技術力は日本ICT産業全体の競争力に直結します。今後は、高性能だけでなく省電力性も半導体開発の重要な競争軸となると考えられます。

ハードウェアからソフトウェア・サービスへの重心移動

ハードウェア市場では、ネットワークスイッチ、ルーター、WLAN、サーバー、ストレージなどが主要製品です。企業がクラウド化やデータ活用を進めるにつれて、社内ネットワークやデータセンターの設備更新需要が高まります。

一方で、ICT市場の成長はハードウェア販売だけでなく、ソフトウェアとサービスへ重心が移る構造を持っています。企業は業務アプリケーション、データ分析、CRM、セキュリティ、クラウドサービスなど、その上で動くシステムを必要としています。ソフトウェア分野では業務効率化、自動化、顧客管理、データ分析への需要が重要であり、IT・インフラサービスではシステム設計、導入、保守、運用、クラウド移行などが含まれます。特に、レガシーシステムの刷新需要は大きく、既存システムを維持しながら新しいクラウドやアプリケーションへ段階的に移行するためのサービスが求められています。

各業界におけるICT活用の進展

中小企業のDX加速

企業規模別では、中小企業が2026~2035年にCAGR10.3%で成長すると予測されており、市場全体の成長率を大きく上回ります。これは、クラウドサービスの普及が大きく関係していると考えられます。クラウド型サービスは比較的小さな初期投資で利用でき、会計、人事、営業管理、顧客管理などを手軽に導入できるため、中小企業のデジタル化を促進しています。IT専門人材が不足しがちな中小企業にとって、「簡単に導入でき、運用まで任せられるサービス」の需要が高まっています。

BFSI(銀行・金融サービス・保険)のデジタル変革

業種別では、BFSIが2026~2035年にCAGR9.3%で成長すると予測されています。デジタル決済インフラの拡大が成長を支えており、銀行、証券、保険などではオンライン・モバイルを中心とした金融サービスへの移行が進んでいます。モバイルバンキングやデジタル決済の普及に伴い、金融機関には24時間安定稼働するITインフラと、取引データをリアルタイムで処理し不正利用を検知する分析システムが不可欠です。また、ICT投資とサイバーセキュリティ投資は一体化しており、フィンテックとの連携も市場を変える要因となっています。

その他の主要分野

IT・通信業界自体も大きな需要先であり、通信事業者は5Gネットワーク構築と並行してクラウド、データセンター、法人向けITサービスへと事業領域を広げています。政府分野では行政サービスのデジタル化が需要を支え、小売・Eコマース分野ではオンライン販売の拡大と店舗DXがICT需要を押し上げています。製造業ではスマートファクトリーの実現に向けてIoT、ロボット、デジタル設計などが進められ、エネルギー・公益分野では電力網のデジタル化やスマートメーターなどでICTが活用されています。さらに、電子書籍、動画、音楽などのデジタルコンテンツに対する需要増加もICT市場を支える一因となっています。

競争環境と主要企業の動向

主要企業としては、IBM、Microsoft、Sony Group、Fuji Soft、NTT Data Group、Salesforce、Fujitsu、Hitachi、NEC、TISなどが挙げられています。海外IT大手と日本の総合IT・SI企業が混在する競争構造です。今後の競争では、データセンターや5G基地局の電力消費増大に伴い、省電力性がますます重要になると考えられます。

企業にとってのICT投資の目的も変化しており、今後は「業務プロセスをどのように変えるか」「データからどのように価値を生み出すか」が重要になります。そのため、ハードウェア単体の市場よりも、ソフトウェア、クラウド、コンサルティング、マネージドサービスを組み合わせた総合型ICT需要が強まると考えられます。

今後の見通し

2035年に向けた日本のICT市場の主要テーマは、「5G・高速通信」「クラウド」「中小企業DX」「デジタル決済」「半導体・省電力化」「企業・行政のデジタル化」に集約できます。BFSIや中小企業が市場平均以上に成長すると予測されていることからも、ICTが一部の大企業や通信事業者だけの市場ではなく、社会・産業全体の基盤へと広がっていることが分かります。

最終的に、日本のICT市場は「通信機器やIT製品を販売する市場」から、「企業活動、金融、行政、製造、コンテンツ消費など経済活動全体をデジタル化する基盤市場」へと発展していくと考えられます。今後の競争力を左右するのは、単一の製品性能だけでなく、ハードウェア、クラウド、ソフトウェア、通信、セキュリティ、運用サービスをどこまで統合して提供できるかという総合力となるでしょう。

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