チプレット市場、2035年に3,500億ドル超へ急拡大の見通し – AI・HPC需要が牽引

チプレット市場が急拡大、2035年に3,507億9,000万米ドルへ

Report Ocean株式会社の調査によると、チプレット市場は2025年の544億9,000万米ドルから、2035年には3,507億9,000万米ドルへと大幅に拡大する見込みです。2026年から2035年にかけての年平均成長率は23.1%と予測されており、特にAIや高性能コンピューティング(HPC)向け先端半導体技術が市場拡大の主要な牽引役となっています。

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半導体設計の転換点:モノリシックからモジュラーへ

チプレット技術は、巨大な単一チップに機能を統合する従来のモノリシックなシステムオンチップ(SoC)設計から、演算、メモリ、入出力などの機能を複数の小型ダイに分割し、高度なパッケージング技術で統合するモジュラー型半導体アーキテクチャへの転換を示しています。このアプローチにより、高い性能と柔軟性を実現し、製品開発サイクルの短縮が可能になります。AI、高性能コンピューティング、データセンターにおける処理能力の要求が高まる中、半導体メーカーは微細化競争だけでなく、異なる機能を組み合わせるシステム設計力に注力し始めています。

性能向上と開発コストの最適化

チプレットへの関心が高まる背景には、半導体の高性能化に伴う設計・製造の複雑化があります。大規模なモノリシックSoCでは、チップ面積の拡大や高度な製造プロセスへの移行に伴って、設計負担、製造難易度、歩留まり、開発期間などを総合的に管理する必要があります。これに対しチプレット型では、必要な機能をモジュールとして分割し、用途に応じて再構成できる可能性があります。そのため、先端プロセスをすべての機能へ一律に適用するのではなく、性能要求やコスト構造に応じて異なるプロセス技術を組み合わせるという選択肢が生まれています。市場が年平均成長率23.1%という高い成長率を示す背景には、性能向上だけでなく、製品開発の柔軟性や設計資産の再利用性まで含めた「半導体開発の経済性」を見直す動きがあると考えられます。

広がる事業機会と市場セグメンテーション

チプレット市場の事業機会は、AIアクセラレーター、高性能コンピューティング、クラウド・データセンター、自動車、通信機器など多岐にわたります。CPU、GPU、アクセラレーター、メモリ、I/Oなどをどのように組み合わせるかが製品競争力を左右するため、半導体メーカーに加え、設計IP、先端パッケージング、基板、検査・計測、製造装置、材料など周辺領域にも商機が波及するとみられます。顧客企業側でも、汎用品を購入するだけでなく、自社ワークロードに適した半導体構成を検討する重要性が高まっています。

市場は以下のセグメントで構成されます。

  • パッケージング技術別

    • 2.5D/3D

    • フリップチップ・チップスケールパッケージ(FCCSP)

    • フリップチップ・ボールグリッドアレイ(FCBGA)

    • ファンアウト(FO)

    • システム・イン・パッケージ(SiP)

    • ウェハーレベル・チップスケールパッケージ(WLCSP)

  • プロセッサ別

    • 中央処理装置(CPU)

    • グラフィックス処理ユニット(GPU)

    • アプリケーション処理ユニット(APU)

    • 人工知能プロセッサ専用集積回路(AI ASIC)コプロセッサ

    • フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)

  • 用途別

    • エンタープライズエレクトロニクス

    • 民生用エレクトロニクス

    • 自動車

    • 産業用オートメーション

    • 軍事と航空宇宙

    • その他

地域別動向と日本の役割

地域別では、アジア太平洋地域が2035年まで市場を牽引すると予測されています。これは、強力な半導体製造能力、政府による投資、家電製品の生産拡大、および先進的なチップパッケージング分野における研究開発(R&D)の取り組みの増加に支えられています。

日本政府は半導体・デジタル産業基盤の強化を重要政策として進めており、チプレットの普及には高密度実装、接合、基板、検査、材料、熱対策など、日本企業が技術的蓄積を持つ複数の領域が関係します。したがって、日本企業にとっては、先端ロジック半導体そのものの競争だけでなく、チプレットを量産可能なシステムへ仕上げる周辺技術でポジションを確立する戦略も重要です。

今後の展望と経営戦略上のリスク

2025年から2027年にかけて、チプレットの焦点は「技術実証」から「量産経済性」へと移行すると考えられます。企業の評価軸は個別チプレットの性能から、接続技術、パッケージング、テスト、熱管理まで含めたシステム全体の完成度へ移ると考えられます。標準化や相互運用性が進展すれば、異なる機能や設計資産を組み合わせるエコシステム型の開発モデルがさらに重要になる可能性があります。

市場の急成長が見込まれる一方で、経営層は以下の戦略的リスクを考慮する必要があります。

  • 技術投資負担と競争: 日本市場では既存プレイヤーとの競争が激しく、技術投資負担が大きい。

  • サプライチェーン構築: 安定した供給能力と強固なエコシステム構築が競争力の重要な要素。地政学的リスク、原材料調達、製造能力不足などの外部要因にも備えたリスク管理体制が求められます。

  • 実装コストと標準化: 複数ダイを統合するほど、パッケージング、検査、熱設計、電源管理、ダイ間通信などの難易度は高まり、システム全体の歩留まりやコスト管理が重要になります。また、異なる企業のIPやチプレットを組み合わせるエコシステムが拡大すれば、インターフェース標準、互換性、品質保証、知的財産、サイバーセキュリティへの対応も経営課題となります。

成功する企業は、市場成長率だけを見るのではなく、顧客価値創造、技術ロードマップ、投資効率、グローバル展開力を総合的に評価した戦略的意思決定を行う必要があります。チプレット市場の拡大期において、明確なビジョンと柔軟な経営判断を持つ企業が、2035年以降の市場リーダーとしての地位を確立すると考えられます。

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