首都圏中古マンション市場は「下落」ではなく「需要の再配置」へ – 福嶋総研が詳細分析

首都圏中古マンション価格は「下落」ではなく「需要の再配置」

2026年5月度、首都圏の中古マンション成約㎡単価は73ヵ月ぶりに前年同月を下回り、さらに6月度も2ヵ月連続で下落しました。この状況から「首都圏中古マンション市場はいよいよ価格下落局面に入った」との見方も少なくありません。しかし、マンションリサーチ株式会社の調査によると、この価格下落は首都圏全域で一斉に起きているわけではなく、特定のエリアにおける構造変化が平均価格を押し下げている可能性が高いと分析されています。

首都圏価格下落の背景:東京都の動向が全体を牽引

調査期間2023年1月から2026年6月、143,955事例の中古マンション売出情報を基に実施された分析では、首都圏(一都三県)の中古マンション成約坪単価の推移において、東京都が最も特徴的な動きを示しています。

2026年4月頃から東京都の成約坪単価は明確に下落へ転じており、その下落幅は神奈川県、埼玉県、千葉県と比較して大きくなっています。この変化が首都圏全体の平均価格に強く影響していると考えられます。

首都圏都道府県別中古マンション成約坪単価推移

都心5区で始まった価格調整と流動性の低下

東京都内をさらに細分化して分析すると、この価格調整は主に都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)で進行していることが明らかになりました。一方、都心5区を除く東京23区では成約坪単価は高い水準を維持し、大きな下落は確認されていません。

都心5区では、直近数ヶ月で値下げ回数が急激に増加しています。通常、価格を引き下げれば販売期間は短縮される傾向にありますが、実際には値下げ回数が増加しているにもかかわらず、販売期間も同時に長期化しています。これは「価格を下げても買い手がすぐには現れない」という市場の流動性低下を示唆しており、都心5区の需給バランスが変化し、価格形成が転換点を迎えている可能性が高いと見られます。

都心5区: 中古マンションの販売日数と値下げ回数

実需エリアの底堅さ

対照的に、都心5区を除く23区では異なる市場環境が見られます。販売期間、値下げ回数ともに若干の上昇は見られるものの、その水準は依然として低く、高い流動性が維持されています。これは、実需に基づく住宅取得ニーズが堅調であることを示唆しています。

住宅ローン金利の上昇が見られる中でも、生活利便性や通勤利便性の高いエリアでは、住宅取得を目的とした購入層が依然として存在し、需要が価格を支えている状況です。都心5区のような高価格帯市場が投資需要や資産保有目的の購入割合が高いのに対し、実需市場は金利上昇や景気の先行き不透明感の影響を受けにくいと考えられます。

23区(都心5区を除く): 中古マンションの販売日数と値下げ回数

成約件数構成比の変化:需要のシフト

首都圏全体に占める東京都の成約件数の割合は近年徐々に低下しており、裏を返せば、神奈川県、埼玉県、千葉県の成約件数割合が相対的に増加しています。これは、価格が高騰した東京都から、比較的購入しやすい周辺三県へ需要がシフトしている可能性が高いことを示しています。

金利上昇によって住宅ローンの返済負担が増加すれば、購入可能価格帯は低下します。その結果、同じ予算でより広い住戸を取得できる周辺エリアへ需要が移動することは自然な市場行動と言えるでしょう。首都圏全体の流通量に大幅な落ち込みは見られず、「どこで買われているか」が変化していると考える方が、市場の実態に近いと分析されています。

東京都 : 中古マンション成約件数割合

今後の市場は「下落」ではなく「需要の再配置」

これらのデータから、今回の首都圏中古マンション価格の下落は、首都圏全域で需要が急減し市場全体が弱含んでいることを示すものではないと結論付けられます。最も価格水準の高い東京都、特に都心5区で価格調整が進み、その影響で首都圏全体の平均成約単価が押し下げられているという構図が見えてきます。

一方で、実需が中心となる23区周辺部や周辺三県では流動性が維持され、需要そのものが消えているわけではありません。購入層が価格とのバランスを重視し、より現実的な価格帯のエリアへ移動していると考えられます。今後も金利環境や住宅ローン負担の変化が続けば、この需要シフトはさらに進む可能性があります。その結果、都心の超高価格帯と実需エリアとの価格推移や流動性の差は一段と鮮明になるでしょう。

今回のREINSデータは、「首都圏中古マンション市場が下落した」という単純なメッセージではなく、「市場の中心が変わり始めている」という構造変化を示している可能性があります。今後の市場を読み解くうえでは、首都圏全体の平均価格だけで判断するのではなく、エリアごとの流動性や成約件数の変化をあわせて分析することが、これまで以上に重要になっていくでしょう。

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