日本市場における上場廃止数の増加とその背景
2024年、日本の株式市場では、上場廃止企業数が新規株式公開(IPO)企業数を上回るという現象が発生しました。この動きは単なる市場縮小ではなく、資本効率、コーポレートガバナンス、市場規律をより重視する「量から質」への構造転換として捉えられています。
この傾向は米国市場でも見られ、米国では上場企業数が1996年の8,090社から2024年には4,010社へとほぼ半減した一方で、市場全体の時価総額は約7.3倍に拡大しています。これは、市場が企業数の拡大ではなく、競争力の高い企業によって構成される構造へと進化していることを示しています。

構造変化を加速させる3つの要因
日本市場の構造転換を加速させている要因として、ホワイトペーパーは「東証改革」「アクティビスト」「PEファンド」の3つを挙げています。
-
東証改革: 資本コストや株価を意識した経営への要請、上場維持基準の厳格化などを通じ、企業に資本効率と企業価値の改善を促しています。
-
アクティビスト: 株主還元の要求に留まらず、事業ポートフォリオの最適化、経営戦略の見直し、ガバナンス改革など、本質的な構造改革を促す存在へと役割を広げています。
-
PEファンド: 非公開化(Take-Private)、MBO(経営陣による自社買収)、事業カーブアウトなどを通じ、企業変革に必要な資金、経営人材、オペレーションの知見を提供しています。
これら3つの動きが重なり合うことで、資本配分の見直し、事業再編、非公開化を含む企業変革が促進され、日本の資本市場に新たな価値創造の循環が生まれつつあると分析されています。
ホワイトペーパーの主なポイント
ホワイトペーパーでは、以下の点が特に強調されています。
-
非公開化の戦略的活用: 2025年にはMBOが過去最多の26件に達しました。非公開化は、市場からの「退出」ではなく、中長期的な構造改革と企業価値向上を進める戦略的手段として活用されています。
-
日本PE市場の成長: 割安な企業価値、ガバナンス改革、良好な資金調達環境を背景に、日本へのPE投資が拡大しています。PEファンドは、資金、経営人材、オペレーションの知見を提供する変革パートナーとして存在感を高めています。
-
株主アクティビズムの促進: 調査によると、アクティビストによる株主提案の約7割が株主還元・財務資本政策およびガバナンスに関するものであり、これが事業再編や非公開化を含む企業変革の契機となっています。
今後の展望
今後の日本市場では、グローバル投資家の要求に応えながら成長を目指す上場企業と、非公開の環境で中長期的な事業再生・構造改革に取り組む企業という二極構造が形成されていく可能性があります。このような環境下では、自社の成長フェーズや経営課題に応じて、パブリック市場とプライベート市場を戦略的に行き来する「ハイブリッドな資本戦略」が一層重要になるでしょう。
ホワイトペーパー全文は以下からご覧いただけます。
YCPは、世界23拠点・700名以上のプロフェッショナルを有するコンサルティングファームとして、アジア地域を中心に企業変革と長期的な事業成長を支援しています。




