日本のサイバーセキュリティ市場、2035年には236.8億米ドル規模へ拡大予測
株式会社マーケットリサーチセンターの調査レポート「サイバーセキュリティの日本市場(2026年-2035年)」によると、日本のサイバーセキュリティ市場は、2025年の約114.9億米ドルから2035年には約236.8億米ドルに達すると予測されています。2026年から2035年にかけての年平均成長率(CAGR)は7.5%とされており、サイバーセキュリティが企業の事業継続に不可欠な投資となっている現状を示しています。

市場成長の背景と要因
市場成長の背景には、サイバー攻撃の増加と多様化、リモートワークの定着、政府によるサイバー防衛強化、IoT機器の急増、そして企業が事業継続性を重視する傾向が挙げられます。
サイバー攻撃の多様化と深刻化
近年、サイバー攻撃はランサムウェア、マルウェア、フィッシング、DDoS攻撃など、その種類が非常に多様化しています。2022年には、マルウェアが全サイバー攻撃の26%を占め、フィッシングが12%、パスワード攻撃が10%と報告されています。特にランサムウェアは深刻で、2022年第1四半期から第2四半期にかけて攻撃件数が前年同期比で87%以上増加し、中小企業の約52%が被害対象となったとされています。
サイバー攻撃による企業への損失は多面的であり、データ損失だけでなく、評判低下(30%)、知的財産の盗難(28%)、業務中断(28%)といった影響も報告されています。これは、サイバー攻撃がIT部門だけでなく、企業経営全体に関わるリスクであることを示唆しています。
リモートワークの拡大と新たなリスク
リモートワークの普及により、従業員がオフィス外から社内システムへ接続する機会が増加しています。これにより、従来の「社内ネットワークの内側は安全」という前提が成立しにくくなり、攻撃対象が拡大しています。マルウェアやフィッシング、アカウント乗っ取りなどのリスクが高まるため、VPNだけでなく、ゼロトラスト、端末認証、多要素認証、EDRなどを組み合わせた多層的なセキュリティ設計が求められています。
政府の取り組みと国際連携
日本政府はサイバー攻撃の増加を受け、アクティブサイバーディフェンス戦略の構築を進めています。疑わしい活動の監視、官民情報共有、通信事業者との連携強化などが重視されており、政府機関だけでなく、関連する民間企業へのセキュリティ投資も波及することが見込まれます。また、Googleが東京にサイバー防衛拠点を開設するなど、国際連携も日本のサイバーセキュリティ能力を高める上で重要です。
IoTの普及とセキュリティの必要性
交通、製造、医療、物流など幅広い分野でスマートデバイスやIoT機器の導入が進むことで、攻撃対象も増加しています。IoT機器がDDoS攻撃の踏み台になったり、工場設備や医療機器への侵入口になったりする可能性があるため、定期的な更新、強力な暗号化、認証、ネットワーク分割、常時監視といった対策が不可欠です。
市場の主要な動向と今後の見通し
「サイバーレジリエンス」への転換
今後の市場を左右する重要な概念として「サイバーレジリエンス」が挙げられています。これは、単に攻撃を防ぐだけでなく、侵害が発生した後も迅速に復旧し、業務停止やデータ損失を最小限に抑える能力を指します。完全にすべての攻撃を防ぐことは難しいため、「どれだけ早く検知し、被害を限定し、復旧できるか」が重要になると考えられます。
サービス市場の成長
企業が単発のセキュリティ製品だけでなく、外部の専門企業によるセキュリティ運用サービスを利用する傾向を強めています。サービス分野は2026年から2035年にかけてCAGR8.3%で成長すると予測されており、市場全体の成長率を上回ります。これは、セキュリティ人材の不足が深刻な企業において、24時間365日の監視やインシデント対応を外部に委託するマネージドセキュリティサービス(MSS)やマネージド検知・対応(MDR)の需要が高まることを示唆しています。
業種別の動向
業種別に見ると、銀行・金融サービス・保険(BFSI)が最大のセグメントであり、2025年には市場全体の約26%を占め、2026年から2035年にかけてCAGR8.6%で成長すると予測されています。金融機関は顧客資産や大量の個人情報を扱うため、サイバーセキュリティは信用維持のための投資として位置付けられています。政府分野もCAGR8.0%と高い成長が見込まれており、行政サービスのオンライン化に伴いサイバー防衛能力の強化が重要視されています。製造業では、工場のIoT化によりOT(運用技術)セキュリティの必要性が高まっています。
主要プレイヤーと技術動向
主要なプレイヤーとしては、IBM、Microsoft、Cisco Systems、Amazon Web Services、Fujitsuなどが挙げられます。各社はクラウド、ネットワーク、エンドポイント、ID、セキュリティサービスなど、それぞれの強みを活かして市場に貢献しています。
また、AI技術は今後の市場で重要な役割を果たすと見られます。セキュリティ側では、膨大なログからの異常検知や攻撃パターン分析にAIが活用される一方、攻撃者側も生成AIを使って巧妙なフィッシングメールやマルウェアを作成する可能性があり、攻防双方でAI活用が進むでしょう。
結論
2035年に向けた日本のサイバーセキュリティ市場の最大のテーマは、「侵入を完全に防ぐこと」から「侵害を前提として、検知・封じ込め・復旧までを一体化すること」への転換です。企業がデジタル化、クラウド化、IoT化を進めるほど攻撃対象も増えるため、サイバーセキュリティ投資は今後も継続的に増加する可能性が高いと予測されます。
調査レポートに関する情報
本調査資料の詳細については、株式会社マーケットリサーチセンターのウェブサイトで確認できます。




