住み替えを阻む現実
40代の共働き夫婦が子どもの小学校入学に合わせて郊外に住宅を購入し、10年後に都心への住み替えを検討したとします。彼らの前には、住宅ローン控除の終了、団体信用生命保険料の上昇、建物の税務価値の低さによるローン残債の問題、そして仲介手数料や登記費用、不動産取得税といった多額の諸費用が立ちはだかります。結果として、多くの家庭が「この家で定年まで頑張ろう」という結論に至り、住み替えという選択肢が合理的な計算の結果として消滅しているのが実情です。
この状況は特殊なケースではなく、日本の多くの家庭が直面する課題であり、住み替えを「選べない」状況が生まれています。
日本の住宅市場の特異な低流動性
経済学では、資産の売買のしやすさを「流動性」と呼びます。株や債券と比較して住宅の流動性が低いのは一般的ですが、日本の住宅市場は世界的にも特異な低流動性を示している点が指摘されています。

具体的なデータを見ると、その差は顕著です。
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年間中古住宅取引件数:米国では通常期に数百万件規模で取引されるのに対し、日本は約20万件前後で推移しており、ストック規模に対する取引比率(回転率)に極めて大きな差があります。
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中古住宅の取引比率(既存住宅流通シェア):国土交通省の集計によると、日本の既存住宅流通シェアは2013年時点で約14.7%にとどまります。一方、英国や米国では70~90%の水準にあり、日本市場の「新築信仰」がストック流通の薄さに直結していると考えられます。
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空き家率:2023年の住宅・土地統計調査では、日本の住宅総数6,504.7万戸に対し、空き家は900.2万戸、空き家率は13.8%に上ります。この空き家の相当部分が「動かせない資産」として固定化されていると見られます。
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生涯移動回数:米国人が生涯に十数回の移動を経験するとされるのに対し、日本人の生涯引越回数は4~5回程度であり、住宅の購入回数も米国が3回以上であるのに対し、日本は概ね1回です。
これらのデータは、日本の住宅市場が世代を超えて人々を一つの家に固定化する制度として機能していることを示唆しています。
住み替えを阻む「四つの壁」
住み替えを困難にする要因は、大きく分けて「金融」「技術」「人口」「資産観」の四つの層に分類されます。これらはそれぞれ独立した問題ではなく、互いに複雑に絡み合いながら、消費者を一つの家に縛りつけていると分析されています。住宅が高価であること自体が問題なのではなく、高価な意思決定であるにもかかわらず、選び直す制度が十分に整っていないことが本質的な課題です。
PropTech-Labは、不動産市場に新たな価値をもたらし、人々が住まいを選ぶ際の新たな基準や簡便さ、価値観を醸成・提供することを目指しています。市場のニーズに応え、価格高騰のスパイラルを抑制し、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられるよう努めています。

この先、日本の住宅市場に立ちはだかる「四つの壁」の正体、特に「第一の壁(住宅ローンが住み替えを罰する仕組み)」とは何か、そして住まいを「選び直せる資産」に変えるための解決策については、以下の公式サイトで詳細が公開されています。
PropTech-Lab所長 清水 千弘氏について

PropTech-Lab所長を務める清水 千弘氏は、一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長を兼任しています。東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退後、東京大学博士(環境学)を取得。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授などを歴任し、2024年7月よりPropTech-Lab所長に就任しています。
株式会社property technologiesについて
株式会社property technologiesは、「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」をミッションに掲げ、年間36,000件超の不動産価格査定実績やグループ累計約15,000戸の不動産販売で培ったリアルな取引データ・ノウハウを背景に、「リアル(住まい)×テクノロジー」で実現する「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来を目指しています。



