ABBは、Graco Inc.の子会社であるElectric Torque Machines(ETM)との協力関係を拡大すると発表しました。ETMが特許を取得しているTransverse Flux Motor(TFM)技術を活用し、データセンタの冷却に使うモータの開発と商業化を進めます。製品はABBブランドで市場に投入される予定です。
提携の概要:TFM技術で高トルクの冷却モータを開発
今回の取り組みの主なポイントは次のとおりです。
- ETMの特許取得済みTFM技術を活用し、高トルクのダイレクトドライブ冷却モータを開発する
- よりシンプルで信頼性の高い冷却インフラを実現し、エネルギー消費とメンテナンス負荷を削減する
- AIデータセンタの世界的な拡大を背景に、急成長するミッションクリティカルな市場で事業拡大を目指す
TFMモータは、低速域で高いトルクを出せる点が特長です。そのため、大型冷却ファン、ポンプ、冷却塔など、高密度化が進むデータセンタの冷却設備に最適だとしています。
両社トップのコメント
ABB NEMAモータ事業部のグローバルビジネスライン エグゼクティブ・バイスプレジデントであるジャスティン・マクマホン氏は、AIによってデータセンタの設計が大きく変わる中、事業者は「より少ない資源でより大きな成果を実現する」冷却ソリューションを求めていると述べました。具体的には、エネルギー消費を抑え、設備の複雑さを軽減し、ダウンタイムを最小限にすることを指します。同氏は、ETMとの提携拡大により、こうしたニーズに応える差別化されたモータ技術を提供できるようになるとしています。
Graco Inc.のCEOであるマーク・シーハン氏は、ABBとの提携を、Transverse Flux Motor技術をデータセンタ市場へ大規模に展開するための最適な道筋だと位置づけました。ABBのグローバルな事業基盤と電動化分野での深い知見から、信頼性と効率性が重視される用途にこの技術を展開するうえで理想的なパートナーだと述べています。
背景にあるAIデータセンタの電力需要拡大
国際エネルギー機関(IEA)の「Electricity 2025」によると、2025年の世界のデータセンタ電力需要は17%増加し、そのうちAI向け施設は50%の成長を記録しました。これにより、演算能力や先進インフラへの需要は、かつてないほど高まっています。
データセンタの規模が大きくなるにつれ、冷却はミッションクリティカルな要素になっています。事業者が求めているのは、より高効率で保守しやすく、低騒音性に優れ、連続運転に適したソリューションです。
シンプルな構造で総保有コストの低減へ
TFMのダイレクトドライブ構造は、大規模な冷却用途で有力な選択肢になるとされています。機械構造の複雑さやエネルギー変換ロスを減らし、騒音の抑制、保守負担の軽減、ライフサイクル全体での総保有コスト(Total Cost of Ownership)の低減に貢献します。
さらに、ABBの可変速ドライブ(VSD)や幅広いモータポートフォリオと組み合わせることで、データセンタ事業者は自社のインフラ要件に合わせて最適化された高性能な冷却ソリューションを、より幅広く選べるようになります。
今回の提携は、ABBがこれまで展開してきた高効率モータ、低高調波ドライブ、液冷技術のポートフォリオを補完するものです。データセンタの発熱量が増え続ける中、ABBはミッションクリティカルな性能要件に対応する冷却ソリューションの強化を進めています。
両社について
ABB モーションは、モータとドライブのグローバルリーダーとして、デジタル技術を活用したドライブ、モータ、サービスを提供しています。140年以上にわたる電動パワートレインの専門知識を持ち、世界100カ国で23,000人以上の従業員を擁しています。ETMはGraco Inc.(NYSE: GGG)の100%子会社で、低速ダイレクトドライブ用途向けに、高いトルク密度と優れた効率性を実現するTFM技術の開発とライセンス提供を行い、主要な産業機器メーカーと連携しています。
出典:ABB株式会社